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「籍を入れる」ことに、片方は氏(姓)が変わるのを避けたい、もう片方は将来の相続や税のことが不安、という食い違いは珍しくありません。事実婚(婚姻届を出さずに夫婦として共同生活を営む関係)を選ぶかどうかは、気持ちの問題であると同時に、相続・税・社会保険・子の扱いという「制度の差」をどう受け止めるかの問題でもあります。結論から言えば、選ぶ基準は「氏や対等性を優先するか」対「法的な保護と手続きの簡便さを優先するか」の一点に集約されます。この記事では、その差を制度ごとに事実で整理し、最後に判断の順序を示します。
事実婚と法律婚を「制度」で分けて考える
事実婚と法律婚(婚姻届を提出した法律上の婚姻)は、当事者の実感としては同じ「夫婦」でも、公的な制度の上では扱いが分かれます。分かれ方は大きく4つの領域に集約できます。相続、税、社会保険、そして子どもの氏(姓)と親権です。この4領域を先に押さえておくと、断片的な情報に振り回されずに判断できます。
まず全体像として、法律婚は「婚姻届という1枚の手続き」で相続権や税の優遇、氏の統一といった一連の効果がまとめて発生します。事実婚は、その一連の効果のうち一部は認められ、一部は認められない、という「部分的な適用」になります。どこが認められ、どこが認められないのかを取り違えると、後から取り返しのつかない不利益が生じることがあります。以下の表は、代表的な制度ごとの扱いを並べたものです。個別の要件や最新の運用は、必ず公式の一次情報で確認してください。
| 制度 | 法律婚 | 事実婚 |
|---|---|---|
| 配偶者の法定相続権 | あり | なし(遺言・生前贈与などで備える必要) |
| 所得税の配偶者控除 | 対象 | 対象外とされる |
| 相続税の配偶者の税額軽減 | 対象 | 対象外とされる |
| 健康保険の被扶養者 | 対象 | 要件を満たせば対象になりうる |
| 遺族年金 | 対象 | 生計維持など要件を満たせば対象になりうる |
| 夫婦の氏 | 同じ氏に統一 | それぞれの氏のまま |
| 子の氏・親権 | 夫婦の氏・共同親権 | 原則として母の氏・母の単独親権(父は認知が必要) |
事実婚のメリット:氏を変えず、対等な関係を保てる
事実婚を選ぶ最大の理由は、双方が氏を変えずに済むことです。法律婚では夫婦のどちらか一方の氏に統一する必要があり、実務上は多くの場合で女性側が氏を変えています。仕事上の実績や資格が旧姓に紐づいている人にとって、氏の変更は口座名義や各種登録の変更という手間だけでなく、キャリアの連続性の問題でもあります。事実婚であれば、この統一が生じません。
手続きの軽さも挙げられます。婚姻届を出さないため、関係を解消する場合も離婚という戸籍上の記録が残りません。戸籍にお互いの婚姻・離婚歴を刻みたくないという価値観の人にとっては、この点が選択の決め手になることがあります。ただし、事実婚を対外的に証明する必要が生じる場面(後述の社会保険や遺族年金など)では、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載してもらうなど、関係を客観的に示す備えが求められます。
社会保険の一部は、法律婚と近い扱いを受けられます。健康保険の被扶養者(扶養に入る配偶者)や、公的年金の遺族年金は、事実婚(内縁関係)でも生計維持関係などの要件を満たせば対象になりうる、というのが公的な解説の方向性です。「事実婚だから社会保険は一切使えない」というのは正確ではありません。ただし認定には関係を示す資料が必要で、審査があります。
事実婚のデメリット:相続・税・子の氏で不利になる
一方で、事実婚では法律婚にある保護が及ばない領域があります。最も重いのが相続です。法律婚の配偶者には法定相続分が保障されますが、事実婚のパートナーには法定相続権がありません。つまり相手が亡くなったとき、遺言や生前贈与、生命保険の受取人指定といった「事前の備え」がなければ、長年連れ添っても財産を承継できない可能性があります。この点は事実婚を選ぶ前に必ず理解しておく必要があります。
税の優遇も及びません。所得税の配偶者控除や、相続税における配偶者の税額軽減は、いずれも「法律上の配偶者」であることが要件とされ、事実婚は対象外と解説されています。共働きで所得が近い場合は配偶者控除の影響が小さいこともありますが、相続税の配偶者の税額軽減は金額が大きくなりやすいため、資産がある関係では差が顕在化します。
子どもが生まれた場合の扱いも異なります。事実婚の夫婦から生まれた子は、原則として母の戸籍に入り、母の氏を名乗り、母の単独親権となります。父と子の法的な親子関係を生じさせるには「認知」という手続きが必要で、父の氏に変えたい、共同で親権を持ちたいといった場合には別の手続きが加わります。子どもの就学や医療の場面で父母の関係を説明する必要が出ることもあります。
どちらを選ぶか:条件から結論に落とす判断フロー
メリットとデメリットを並べただけでは決められません。次の順序で、自分たちの条件を当てはめてみてください。
- 子どもを持つ予定があるか。ある場合、認知や親権、氏の手続きが継続的に関わります。手続きの負担を避けたいなら法律婚が実務上は簡便です。
- まとまった資産や、一方に偏った所得があるか。ある場合、相続権の有無と税の優遇の差が金額として効きます。相手に確実に財産を残したいなら、法律婚か、事実婚のまま遺言・保険での備えを本気で整えるかの二択になります。
- 氏を変えないことが、当事者にとって譲れない条件か。譲れないなら事実婚が候補に残ります。その場合は上記1・2の不利を、遺言・生前贈与・受取人指定・被扶養者や遺族年金の要件確認といった実務でどこまで埋められるかを、専門家に相談して詰めます。
- 関係を対外的に証明する備えができるか。事実婚は住民票の続柄記載などで関係を示せて初めて社会保険等の一部が使えます。証明の備えを続けられるかも判断材料です。
整理すると、事実婚は「氏と対等性を最優先し、相続・税・子の手続きの不利を実務で埋める覚悟がある人」に向き、法律婚は「一連の法的保護を1回の届出でまとめて得たい人」に向きます。どちらが上ということではなく、優先順位の置き方の違いです。
結婚相談所は法律婚を前提としたサービス
ここまでは制度の話ですが、出会いの手段を選ぶ段階では前提が一つあります。結婚相談所は基本的に「法律婚(入籍)を目指す人」を対象に設計されたサービスだということです。入会時に独身証明書の提出を求め、成婚(多くの相談所では婚約やプロポーズ成立の時点)をゴールに据える仕組みは、法律上の婚姻を前提としています。事実婚を選びたい人にとって相談所が使えないわけではありませんが、サービスの本線は法律婚に向いていると理解しておくと、期待とのずれが起きません。
そのうえで、まず結婚そのものを前向きに考えているのであれば、費用と仕組みの違いを把握してから相談所を選ぶのが近道です。オンライン型の結婚相談所は、店舗型に比べて費用を抑えつつ活動できる選択肢が増えています。料金体系や成婚料の有無で総額が数十万円変わるため、入口の比較が重要です。詳しくはオンライン結婚相談所 比較|1年12万円と67万円で何が違うかで、初期費用・月会費・成婚料を一覧にして整理しています。
よくある質問
事実婚でも遺族年金はもらえますか。
事実婚(内縁関係)でも、生計維持関係などの要件を満たせば対象になりうると公的に解説されています。ただし関係を示す資料の提出と審査が必要です。認定基準の詳細は日本年金機構の公式情報で確認してください。
事実婚のパートナーに財産を残すにはどうすればよいですか。
事実婚のパートナーには法定相続権がないため、遺言、生前贈与、生命保険の受取人指定などで事前に備える方法が一般的とされています。金額や資産の種類によって適切な手段が変わるので、税理士や司法書士など専門家への相談が安全です。
事実婚だと配偶者控除は受けられませんか。
所得税の配偶者控除は「法律上の配偶者」が要件とされ、事実婚は対象外と解説されています。共働きで所得が近い場合は影響が小さいこともありますが、適用の可否は国税庁の該当ページで確認してください。
子どもが生まれたら氏はどうなりますか。
事実婚の夫婦から生まれた子は、原則として母の氏を名乗り母の戸籍に入り、母の単独親権になります。父との法的な親子関係には認知が必要です。父の氏への変更や親権の扱いには別の手続きが加わります。
結婚相談所は事実婚希望でも入会できますか。
相談所は法律婚を前提に設計されているサービスが基本です。入会自体を妨げられるとは限りませんが、独身証明書の提出や成婚の定義など仕組みが法律婚を前提としているため、方針が合うかを無料相談で確認するのが確実です。
事実婚から法律婚に切り替えることはできますか。
後から婚姻届を提出して法律婚に移行することは制度上可能とされています。切り替えの際に必要な手続きや、子の氏・戸籍の扱いについては市区町村の戸籍窓口で確認してください。
参考・出典
- 厚生労働省「令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai25/dl/gaikyouR7.pdf
- 国税庁 タックスアンサー
